このエントリーは埼玉スタジアムでの敗戦にうちひしがれた筆者が奈落の底まで沈んだテンションをなかなか引き上げる事ができずウダウダと更新を滞らせていたものです。お手数ですが是非とも一度こちらのエントリーをご覧のうえ、時計の針を2008年6月29日に戻してからご一読下さい。ちなみにこの日の天気は「雨」でした。
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傘もささずズブ濡れになったスタッフの方が行列の整理に躍起になっている。30分限定の課外研修。やはり時間がやってくるとバッサリ“切られて”しまうのだろうか…徐々に募る焦燥感。列に並んでから15分以上経ってようやくケータリングカー付近の様子が見えてきた。僕は背伸びをして傘と傘の間に生まれたスペースの奥をのぞきみた。
いた!みえた!やった!
ハッピにねじりハチマキという非常に勝手な事前予想とは違い、ビシッとスーツとネクタイでキメたゴリラ。視界の奥に彼の姿をキャッチした僕は心の中で小踊りした。よかった、雨のなか並んだ甲斐があったというものだ。水滴で濡れた携帯電話の液晶画面をシャツで拭いてキミを…正確にはキミを抱いたママを呼び出す。時間の経過と行列の消化具合を計算しながら待つ事さらに数分、ようやくテントの下にまでたどり着いた。
『長友クン、いたよ!』思いもよらぬ方向から合流してきたママに驚いた。屋根のあるところに避難するなどと言っておきながら、ちゃっかりケータリングカーの前方までズカズカと歩いていき、人垣の中の様子をしっかりと偵察してきたようである。なかなか抜け目がない。
『長友クン以外にもうひとりいたよ』『彼は廣永クンといってだな…』
これが暖かく晴れた午後、のんびりと公園を散歩しているようなシチュエーションででもあれば、ゆっくりと説明したいところだ。頼もしい事に近年優秀なGKの遺伝子が脈々と受け継がれているFC東京ユースチームの状況、そのユースが輩出した逸材のひとりがトップチーム昇格を果たした後に横河武蔵野FCというクラブへ期限付き移籍するに至った経緯、そんな彼もドル紙幣と硬貨を使っての買い物には慣れていないらしく、グアムのホテル内のコンビニでレジを長時間占領してしまい背後に長蛇の列ができていた逸話…まぁそんな事をグダグダと。
残念ながらそのような余裕はなかった。テントに入る、傘をたたむ、カメラを取り出す、「FC東京勝サンド」を手に取る、財布を取り出し忘れる、あわててカバンを開ける、カメラを落としそうになる、あわててカメラを持ちなおす、今度はカバンを落としそうになる。もう、グチャグチャである。代金を支払った記憶もなければ釣銭を受け取った記憶も吹っ飛んでいる。そう、とにかく…
とにかくキミと長友佑都を一枚の写真に収めたかったのだ。
あと4人、あと3人。ひとり勝手に心拍数を高める僕を尻目に、キミは日本代表チームで活躍するスター選手を目の当たりにしても微動だにしない、なかなかの大物ぶりを発揮している。2人前のファンと握手をしている長友の視線が一瞬キミに注がれ、次の瞬間、僕の方向に流れてきた。
ご無沙汰しています。
傘とカメラと勝つサンドで両手は完全に塞がっていたため、心の中で帽子を取って挨拶をした。ひょっとしたら思い出してもらえるかもしれないという期待を込めて、僕はグアムで一緒に写真を撮ってもらったときと同じ“STONE ISLAND”のキャップをかぶっていた。無尽蔵のスタミナを誇る彼らしい動きというべきか、長友の視線がいったんキミに移り、またすぐ僕に戻る。そしてほんの一瞬、彼の口が『あ』のカタチを作ったのを僕は見逃さなかった。
ひょっとして、もしかして。
やがて僕たちの出番がやってきた。ママと長友が同時に言葉を発したため、僕は頭の中で会話の内容を整理するのに多少の時間を要した。ママはきっと『こんにちは』あたりから会話を切り出したのだと思う。そして長友は右手の人差し指をキミに、そして視線を僕に向けながら開口一番…
『グアムで、ね!』
もう、天にも昇る思いなのであった。
『ワハ!生まれた生まれた…可愛い!』
『ワハ!元気に生まれたんでしょう?』
かくしてキミが生まれてくる前ママのお腹に触った唯一の日本代表選手は、キミの手を握ってくれた最初の日本代表選手となった。まるで“親戚のお兄ちゃん”のように自然体で接してくれるのが嬉しい。それにしても5ヶ月も前の事なのにしっかりと憶えてくれていた。よほど彼の記憶力が素晴らしいのか、よほど僕のルックスが特徴的なのか。
カメラを片手に感傷的になっていた僕に対して、女性というのはどこまでも現実的だ。ママはキミを抱いたまま器用に握手をしてもらい、いつのまにやらそそくさと長友の横に並び立つ。そしてドサクサにまぎれてこんな事を言った。
『このコ、誰よりも長友サンに似ていると思うの』
『ケッヒャッヒャッ…イイね!』
なにがどう「イイ」のかは聞かずにおいた。リミットの30分まであと少し。雨の中で待ち続けている他のファンに申し訳ないので時間をかけずに記念撮影。ママとゴリラと、大きなゴリラ。宝物がまた一枚増えた。
『男の子か…絶対サッカーやらせてね!』
ヒマワリ君よ、キミは大変な十字架を背負ってしまったぞ。長友佑都直々にサッカーをするよう勧められたのだ。これは嘘じゃない。勝つサンドを購入してからの約50秒間、彼の台詞も含めてすべて動画で保存してある。MacBookやiPodをはじめ各種メディアに複数コピーを残したからどんなトラブルが起きても証拠映像が消え去る事はない。これも何かの運命だと思ってそう遠くないいつの日か、僕と一緒にボールを蹴ってみよう。ひょっとしたらサッカーが大好きになるかもしれない(そうなったら僕の思うツボだ)。
それ以上にキミに学んでほしい事がある。サッカーの巧拙…ちょっと言葉が難しいな、サッカーがうまいとかヘタだとかいった事よりもはるかに大切な事だ。言葉で表現するのは難しいのだけど、そうだな…それは人間の内面からにじみ出る魅力とでもいうべき数値化できない才能だ。表情、立ち振る舞い、ユーモアセンス、頭の回転の速さ…こういった要素が複合的に絡みあった結果できあがる人間としての資質。
ひとをしあわせにするひと、僕はキミにそんな人間に育ってほしいと願っている。半分は「そう育てる」親の義務、残りはキミ自身が「そう育つ」実力と、周辺環境が生み出す運勢次第だろうか。幸いな事にキミが物心のつく歳になった頃でも、彼は十分“第一線”でプレーしているに違いない。ゴリラみたいな顔した“隣のあんちゃん”がユニフォームに着替えただけでスーパーマンへ変身してしまう(キングコングか?)。男なら誰もが憧れる英雄像。これからも親子共通のヒーローを一緒に追い続けていこう。そしてママと僕がなぜ彼に魅了されるのか、少しずつキミに伝えていく事で大切な何かを感じ取ってもらいたいと思う。
オリンピックイヤーに生まれたキミと、北京で飛翔する長友佑都を目撃したい。
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2008年07月13日付
現在の青赤指数=59(→)
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□□□□□□□□□□70幸福
□□□□□□□□□□80歓喜
□□□□□□□□□□90熱狂
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◎カシマで復活を遂げるか長友!
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