白いカボレ号(前篇)
フジテレビが京都戦を放映しない事への抗議の意味も込めて、僕はハンガーストライキに入った。無謀にも土曜の昼食を「抜いた」のである。苦渋の決断だったが、カップ戦軽視の姿勢を崩さぬお台場の中小企業に対する怒りを表現するにはこれしかなかった。胃袋が不自然に収縮するのを感じながら、僕は新宿三丁目で副都心線に乗り換え、北参道で降りた。「青赤自転車研究所」の先輩所員に教えて頂いたサイクルショップが目的地だった。
中村北斗が、突如として姿を消した。携帯電話を震わせた不可解な先発メンバーを見て、頭の中で無数の疑問符が阿波踊りを始めた。事情は知らぬが、何やら“えらいこっちゃ”が生じた事には間違いなさそうだ。ズラリとバイクが並ぶショップにたどり着くまで、行方知れずのホクトの事ばかり考えていた。本当ならピカピカのクロスバイクに乗って来たかったのだが、生憎の空模様。「ホワイト・カボレ号」には留守番してもらう事にした。
ホワイト・カボレ号には、「シラス」というプロダクトネームもあるので、これとカボレとの造語で「白カボス号」でもいいなと考えている。そもそも自転車に名前をつける事自体、幼稚な行為に思われるかもしれないが、愛犬をイヌと呼ばぬのと同様に、愛車(愛輪)をチャリ呼ばわりしたくないのである。ちなみに先に導入した、ヒマワリ君の保育園送迎用ママチャリ(真っ黒ボディ)には「サリさん」という素敵な愛称がつけられている。
想像以上に細く、軽い。それでいて、80㎏近い身体を乗せても困った顔ひとつしない強さも兼ね備える。先週末、新宿三丁目のショップで引き渡された後、練馬まで走ったのが処女運転となったのだが、さすが、軽くペダルを踏んだだけでギュンと加速してくれる。車道脇を走ってみたが、スピードが出るぶん、事故のリスクだって高くなる。自動車に接触して転倒しただけで、もう簡単に死んでしまいそうだ。ヘルメットの必要性を痛感した。
車体を選ぶのも楽しいが、周辺パーツを選ぶのもまた楽しい。僕の場合、バイクそのものは白を基調に、アクセントとして青と赤を加えていこうと考えている。最初は両のペダルをそれぞれ青赤にしてやろうと思ったが、どうも下品になりそうなのでやめた。今はタイオガ製の白いスパイダー・ペダルに狙いを定め、情報収集中。オシャレの基本は足下から。バイクの場合、ペダルからなのである。こうしてカボレ号はますます白に染まりゆく。
ズラリ陳列されている商品を、片っ端から試着してみた。自分にあうヘルメットを見つける唯一の方法は、とにかく実際にかぶってみる事だ。雑誌やインターネットで、画像と評判を調べただけで購入に踏みきるのは、代理人の言葉を鵜呑みにして外国人選手の補強に踏みきるのと同じくらい危険だ。色、形、千差万別。僕は空腹を忘れ、カパカパと脱着を繰り返した。京都では「非公開試合」が始まったころ。密かに勝利を祈る事は忘れない。
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