ワルノリオ
ヴィッセル神戸のカイオジュニオール監督は、来日時「規律ある攻撃サッカー」を目標に掲げた。ブラジル人が眼鏡をかけただけで、知的な人に見えてしまう単純な僕であるが、昨日の試合をみるかぎり、噂どおりこの監督は、理論的で几帳面な人なのだと確信するに至った。右SB石櫃洋祐のポジションを一列あげてまでして実現させたかった3バック、北本久仁衛・河本裕之・宮本恒靖と見事なまでに「本」という漢字で脚韻を踏んでいる。これにGK榎本達也まで加えると、実に4人の「本」が一堂に会すという徹底ぶりなのである。かくしてエノ・キタ・コウ・ミヤ、四本の鉄杭の上に築かれし神戸の砦を、東京は攻略するどころか、接近する事すらままならない。前半はとにかく観ていて苦痛だった。春の陽気、ところが日の傾きに先んじて試合内容が味の素スタジアムを冷やしていった。
遂に実現した梶山陽平・大竹洋平「ダブル・ヨーヘイ」のトップ下コンビだったが、その二人にボールを収める事ができずに、ボランチのラインで攻撃の流れが遮断されていた。そのポジションに下がったキャプテン・羽生直剛も、スタンドの悲鳴を誘う大胆不敵なミスパスが目立ち、自ら作った断層に足を取られ苦しげにもがいていた。適性というものを考えると、やはり羽生と梶山の位置を入れ替えたほうが、万事が機能しやすくなるのではないかと思う。変化への挑戦、今まさに過渡期であるため、素人が外野からああだこうだ物申すのは甚だ無意味かと思われるが、「梶山がもう一人いれば」というジレンマを解決するには、ボランチに梶山クラスの選手を据えるという夢物語よりは、トップ下で場数を踏んだ大竹が、もう一皮剥ける可能性に賭けるほうが現実的でないかと考えるのである。
神戸の「四本」に対して、東京も「四本」で応戦した。これがチームで放ったシュートの総数だというから驚かされる。水曜に日立台で21本も乱射したチームとは思えない豹変。ぶっつけ本番の色濃い今野泰幸のCB起用、そしてアンカーの位置に「緩衝剤」浅利悟を配置。守備から入るというメッセージを裏づける人選。最終ラインに入ったコンちゃんは心なしか、迷いなくプレーできているように映った。茂庭照幸(どうしたの?)の不在を感じさせぬ、さすがの安定感だった。一方で、心中穏やかでないのが吉本一謙だろうか。東京中日スポーツに鼻息荒いコメントが掲載され、いよいよ満を持しての出陣かと期待されたが、蓋を開ければ日本代表の「サプライズ」起用。漢字にこだわる敵将なら、間違いなく吉本を起用しただろうに…このストレスをプラスのエネルギーに換えて、頑張れよ!
「本」作戦が利いている事に気を良くしたカイオ監督だったが、そのインテリジェンスが仇(あだ)となるから皮肉である。すっかり味をしめた彼は、交代で投入する選手までも漢字で選んでしまったのである。鈴木規郎・茂木弘人と今度は「木」にこだわり始めた。しかも「木」が尽きたと思いきや、松橋章太をピッチへ送り出す奇策に転じた。来日から数ヶ月しか経過していないのに、部首という漢字の概念まで理解する恐るべき知将なのであった。しかし「本」と「木」は似て非なるもの。これについては策士が策に溺れた感が強い。そして何よりも誤算だったのは、鈴木規郎が指揮官の想像以上に「人気者」だったという事だろう。内容に乏しい前半を終え、すっかり元気をなくしていた味スタをたった一人で活性化させてしまった規郎。物凄く歪んだ動機づけで、スタンドが一体となった。
低調な試合内容への不満、審判の働きに対する抗議。諸々のストレスを発散させる対象として、背番号20は格好の標的だった。ボールに触れるたび発生する大ブーイング。笑顔でブー。試合に飽いた以上、こちらで楽しませてもらいまっせという「悪くない悪乗り」であった。期待された弾丸FKも、期待以上の暴発に終わり、さらにスタンドが沸き返る。『ホームランとはどういう意味だ?』聞いた事のない種類の野次に戸惑うカイオ監督が、スタッフへ問いただす。野球とは無縁の国で育った彼だから、ホームランを漢字で表すと「本」になるというトンチを理解するには、ずいぶん時間がかかるだろう。試合終了後、東京ゴール裏から送られた規郎コール、それに両手を振って応えてくれた金狼。これにて本件ハッピーエンドで終了。終わってみればこの日の主役は鈴木規郎、その人であった。
儀式を義務化する必要はない。大竹と今野の両名が「シャー」をやんわりと拒否した事に安堵する。三分咲きだろうと桜は桜と言うなかれ。下手に花見を決め込むと、この季節、必ず風邪をひく。
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2009年03月30日付
現在の青赤指数=55(→)
■■■■■■■■■■10発狂
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□□□□□□□□□□70幸福
□□□□□□□□□□80歓喜
□□□□□□□□□□90熱狂
□□□□□□□□□□99絶頂
◎でも呑んじゃいましたけどね
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